製品にはライフサイクルがあります。当然、皆一様というわけではなく、各製品によって違いはあります。しかしある程度同じパターンを描く可能性が高いのであれば、事前に準備できるし、対策を練ることもできます。
なぜ私の仕事で製品のライフサイクルを考えるのかというと、私らの仕事は色々な業界の仕事に携わります。食品、医療、報道、製造業などなどあげたらきりがないほどです。そんな時、ある商品を紹介するサイトをただ羅列して紹介したのではあまり効果を期待することはできません。効果は運頼みの部分が強いと思います。そこでその商品のライフサイクルを考えた上で、どのように紹介(表現)すべきかを考えます。その方が効果を期待できると思います。この様な理由でライフサイクルを考えます。
では次にライフサイクルを説明します。
ライフサイクルには導入期、成長期、成熟期、衰退期があります。
導入期とは文字通り新製品を市場に導入し始めた頃のことです。発売直後から売上高が成長し始める前までを指します。この段階ではまだ売上高が少なく、利益がマイナスである場合が多く、利益がでてもほんのわずかです。競争相手もまだでそろってなく、少数企業のみが新しい製品を手がけている状態です。顧客は新しいもの、珍しいものが好きで、積極的なイノベーター(革新者あるいはマニア)です。
この時期の戦略的な課題は市場の拡大になります。競争相手も少なく、互いにシェアの食い合いをするよりも、皆で協力して市場全体を大きくした方がよい。
導入期に製品の普及率が低いのにはいくつかの理由が考えられます。ひとつは顧客が製品の存在自体を認知していない場合です。また製品の存在自体は認知しているものの、使い方がわかっていなかったりなどの疑問や本当に便利なのかなどの偏見があるために買い控えしている場合もあります。ほかにも企業側では生産が立ち上がっておらず、需要を満たすだけの製品を生産できなかったり、生産初期のため不良品が多かったり、効率的な流通経路が確保されてないなどもあります。
普及を妨げている障害あるいはボトルネックを探す際に、アイドマ・モデルが役に立つ場合があります。導入期に製品がなかなか売れないということは、消費者が購買という行動を起こしてくれないということだから、アイドマ・モデルの5ステップのどこかに問題があるかもしれません。いろいろな可能性を整理して考える際には、このアイドマ・モデルが便利です。
導入期の戦略を立案するには、普及を妨げているボトルネックを明らかにし、それを除去することを目指せばよい。ボトルネックによって具体的なマーケティング・ミックス(4つのP)のあり方も変わりますが、この時期の定石も一応存在します。
プロダクトはできるだけその製品の本質サービスを顧客に理解しやすく、使いやすくすべきであろうし、製品の本質サービスをよりよく理解してもらい、偏見を取り除くために説明重視のプッシュ戦略(プロモーション)を基本とすべきです。説明重視のプッシュを行うとすれば、広範な流通業者を使うことはできないので、プレイスについては閉鎖型チャンネル政策を採用し、限られた数の流通業者に積極的に販売してもらうべく高いマージンを設定する。このようにマーケティングにかかるコストは高水準であり、しかも生産を始めたばかりだから製造コストも高いであろう。これを回収するためには価格も高めに設定しておくのが無難です。
もちろん、この時期の価格政策には別の見方もあります。価格が高いことが普及のボトルネックになっていて、しかも大量生産によってコストが大幅に下がるのがわかっているのであれば、原価割れした価格を設定し、一気に市場を立ち上げるのも一つの手です。このような価格政策を浸透価格政策といいます。早い時期にトップの市場シェアを獲得し、それがさらなる低価格化を可能にし、市場シェアをさらに高める、という好循環が期待できるときには有効な価格政策です。逆に、初期のイノベーター(マニア)と呼ばれる顧客は、新しいものならどんな価格でも買う、というタイプが多いので、この顧客層を相手に製品の開発費や初期のプロモーション費用など導入期のコストを回収してしまうという手もあります。これを上澄み価格政策といいます。